ホーム > 介護障がい福祉 > 介護事業の特徴と留意点 > 4. 地域密着型特別養護老人ホームの特徴と留意点は?
介護事業の
特徴と留意点
地域密着型特別養護老人ホームは、2006年の介護保険法改正に伴い新設された地域密着型サービスの一つです。設置するためには、まず老人福祉法にもとづき都道府県又は中核市の設置認可を受けます。
つぎに介護保険法による事業者の指定を市町村から受けることになります。この施設は広域型の大規模な老人ホームではなく、入所定員が29名以下の小規模な施設で、原則として施設がある市町村に居住する人だけに利用が限定されています。提供されるサービスの内容は、特別養護老人ホームと同じで、地域密着型サービス計画に基づいて、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話が行われます。
なお要支援1・2の人は利用することができません。2014年3月現在、広域型の特別養護老人ホームの事業所数6993に対して、地域密着型特別老人ホームの事業所数は1246となっています。
人員基準としては、経験のある施設長、社会福祉士等の要件を満たす生活相談員、機能訓練指導員、医師、ケアマネジャー、入所者3人につき1人の介護職員(1人は常勤)、看護職員1人以上(1人は常勤)の配置が必要です。昼間については、ユニットごとに常時1人以上の介護職員又は看護職員の配置が必要であり、夜間はユニットごとに1人以上の介護職員又は看護職員を配置することになります。
設備基準としては、居室の定員は1名又は2名で、いずれかのユニットに属するものとし、1つのユニットの入居定員は10名以下とされています。居室の面積は10.65㎡、2人居室は21.3㎡以上とされています。共同生活室は、いずれかのユニットに属するものとし、1つの共同生活室の床面積は、2㎡にユニットの入居定員を乗じた面積以上とされています。
次に設置に要する費用ですが、2013年の日本医療福祉建築協会の報告書によりますと、ユニット型の建設単価は次のとおりです。
▼ 平均値 | |
㎡単価 | 224,026円 |
一床当り延床面積 | 56.11㎡ |
一床当り建設単価 | 12,460,278円 |
※ 一般社団法人日本医療福祉建築協会2013年報告書より |
また、建設書の資金調達の傾向として、「従来型」に比して「ユニット型」では交付金(旧補助金)の割合が少なく、資金調達の内訳を見ると、借入金の比率が大きな割合を占めています。(同報告書より)
▼ 平均値 | |
借入金(円/床) | 6,789,414円 |
自己資金(円/床) | 1,250,220円 |
補助・交付金(円/床) | 4,420,643円 |
計(円/床) | 12,460,278円 |
建設費の資金調達割合(ユニット型) | |
※ 一般社団法人日本医療福祉建築協会2013年報告書より |
地域密着型介護福祉施設サービス費の報酬単価は、サービス費(Ⅰ)の要介護3は、719単位となっていますので、定員29名で2級地の場合、収入は以下のとおりとなります。
月当たり介護報酬は
29人×単位数(719)×30日×10.72=6,705,681円
厚生労働省の介護事業経営実態調査によりますと、地域密着型特別老人ホームの特甲地の1ヶ月当り収入は、介護報酬が896万5000円、保険外の利用料収入等の他の収入を加えると収入合計1082万9000円に対し、介護事業費用1076万円を控除し、介護外収益費用を差引すると7万1000円/月の赤字となっています。
老人ホームは80名・100名定員の大規模施設にスケールメリットが生じます。ホームの規模にかかわらず、施設長、相談員、栄養士の配置は1名ですみます。規模の小さいところはどうしても採算がとりにくくなり、特に単独型での経営は将来の建て替費用を考えると、収支は厳しいといわざるをえません。
したがって、その立地も地域密着型とはいいながらも、母体施設との連携の必要上、市街地調整区域に所在することも多く、この施設の運営の厳しさを物語っています。
前述の問題点があるため、サテライト型施設については、本体施設が人員に関する基準を満たしている事を前提に、入所者の処遇が適切に行われていると認められるときは、職員の配置が緩和されています。
たとえば本体施設が医療機関の場合、サテライト型施設においては、医師・栄養士・ケアマネジャーを置かないことができるとされています。本体施設が老人保健施設の場合、さらに生活相談員・機能訓練指導員を置かないことができるとされています。2015年の介護報酬改定において、サテライト型の本体施設として地域密着型老人福祉施設が追加されました。